
伝説ではなく、現実の話である。
かつては自称ヴァンパイアハンターが、日本中にいくらでもいた。
実在したヴァンパイアハンターとは、『悪魔城ドラキュラ』シリーズを愛し、己の腕を研くことに喜びを見いだしていたACTファンたちのことである。
しかし月日が流れ、今や横スクロールACTはめっきり減ってしまった。ヴァンパイアハンターが衰退の一途をたどったのも、それは時代の定めだったのかもしれない。見事なムチさばきで闇を狩っていた者たちも、ある者は演出過多なACTに目覚め、またある者はゲームそのものを忘れて腕をサビ付かせてしまった。
凄腕がそろっていたゲーム誌の現場すら例外ではない。往年のヴァンパイアハンターたちはほとんどがエラくなって現場を離れ、また若い世代はたいてい横スクロールACTでの実戦経験が不足している。ヴァンパイアハンターの生き残りは、本稿を執筆している私のほか、一握りしか存在しないのかもしれない。
そんな私に依頼が舞い込んだ。「闇を狩るとは、どんなモノか見せてほしい」と。望むところだ。こうして去年、『悪魔城ドラキュラXクロニクル』電プレオンライン特製動画「ステージ5’(上ルート)」版および「ステージ5’(下ルート)」版をアップさせてもらった。
ほかにも仕事は抱えているし、スケジュールの都合もあったため、アップしたものは満足いくプレイには程遠かった。これは謙そんでも強がりでもない素直な気持ちであり、今なおヴァンパイアハンターの域にある人なら、自然と感じ取っているだろう事実だ。例えばピーピングアイ(目玉の敵)を仕留めるのに一部で手間取ったりと、細かいミスはいくらでもある。ただ、1つのパフォーマンスとしてネットで公開して恥ずかしくないレベルは死守したつもりだ。実際のところ、あのプレイには編集部や知人、そして一般のみなさんから一定の評価はいただいている。
その声を1つ1つ吟味しながら、『悪魔城ドラキュラXクロニクル』は偉大だと改めて思い知らされた。
まず第一に本作はなんと奥深いのか、という点に目を向けたい。
いかなるゲームであれ、やり込むに従って「こんな攻略法があるのか!」とか「こんな技術的追求の領域があるのか!」といった発見があるものだ。そして発見し尽くしたあとは、プレイの精度を高めていく楽しみが残る。
私が本作をやり込んだ期間は長い。普通のACTにこれだけの時間とパワーをかければ、発見要素にしろプレイの精度にしろ、ほぼ極めきっているハズである。しかし正直、本作のゴールは今だに闇のなかだ。ステージ5’だけを見てもまだ発見があり、精度は高まり続けているという、上達まっさかりの段階だ。私はあと5時間あれば、今よりもっとスゴいプレイができる自信があるし、もし仮に5時間与えられれば、「さらに5時間あればもっと……」と語る自分を想像できる。
それほどの深さがあるからこそ、腕があがるほど、できるプレイがどんどん広がっていく。アップした動画は、知人の上級者何人かにも見てもらったが、全員に「こんな攻略法は知らなかったよ」と言わすことができた。十分なやり込みで頭打ちになるACTでは、こうは行かないだろう。
第二のポイントとして、その深さが“量”ではなく“質”によって築かれている点を挙げたい。
今や多くのゲームは大型化し、「ステージ数が膨大!」であるとか「敵を何度も倒し続けて強化していける武器がいっぱい!」といった“物量頼みの奥深さ”は珍しくなくなった。しかし、「ごく限られた範囲&条件で遊んでいるだけで、あとからあとから攻略法や上達の余地があふれ出す!」といった“内容そのものの奥深さ”にはなかなか出会えないものだ。そんな“質”ゆえの奥深さが、本作には確かに存在する。
その証拠に、アップした動画はたった数分のものだったにかかわらず、十分な見ごたえを詰め込むことができた。
ここ最近の名作ACTでは、これほど密度の濃い動画は作れない。ゲームの深さを見せるからには「おもなスキル(アクション)習得までの流れを3時間45分にまとめました!」
とでもなってしまうのがオチだろう。
そして第三のポイントが、プレイヤーの力量がプレイにズバリ現れる点だ。
最近の名作3D・ACTを思い浮かべてみよう。腕のたつ人のプレイを見たとして、本作ほど“プレイヤーの色”をストレートに出せるものだろうか? そのゲームをやり込んでいない人には「何をしていて、どこが高度なのか直感的に伝わらないけど……」といわれてしまうかもしれない。また、どこまでがゲーム側のオートで行われているアクションで、どこからがプレイヤーの指さばきによるアクションなのかも判別しにくいことが多いだろう。逆に本作では、シンプルなシステムで内容が濃く、プレイのスゴさや意図が鑑賞者に自然と伝わる。
本作を遊んだことがない人であっても、あの動画を見れば「あ、ギリギリまで敵を引き付けているんだな。あれでも当たらないんだね」といったおもしろさを感じ取ってくれたハズだ。
以上3ポイントをとおして、『悪魔城ドラキュラXクロニクル』が最近のACTとは一味違った名作であることが、わかってもらえたと思う。
横スクロールACTはシンプルゆえに成功とミスの境界線がわかりやすく、上手なプレイを追及するときの深みで群を抜く。今の3D・ACTが演出や臨場感を得る代わりに捨てた魅力、そして輝きがここにはあった。そう、とくに『悪魔城ドラキュラXクロニクル』では、それを強く実感できる。
本作を遊んでいなかった人には、ぜひこの魅力を知ってほしい。本作をすでに遊んでいる人には、もっとその深みを感じ取ってほしい。
それを世に広く知らしめるのが、ヴァンパイアハンターの生き残りたる私の使命なのだから……。 (城イドム)
※『悪魔城ドラキュラXクロニクル』の公式サイトはこちらです。